<Q 質問 Q>
音楽を楽しむために必要なモノをひとつあげるとしたら何でしょうか?
<A 答え A>
時間
もしかしたら、「レコード」や「オーディオ」と考えた方がいるかもしれない。
「必要なモノは?」とたずねておいて、モノではない「時間」という答えを反則と感じた方、申し訳ない。
しかし、音楽を楽しむためには、何より「時間」が必要となる。
例えば、3分の曲を聴くためには、3分間がぜったいに必要だ。
早回して2分に短縮しては、音楽を十分に楽しむことはできない。
つまり、音楽は時間と切り離すことはできない、ということだ。
しかし、普段あまりそんなことは考えない。
音楽を聴く、ということだけを考えるのなら、大層なオーディオ装置は不要である。
簡単な装置、例えば、パソコンやスマホがあれば十分。
これで大抵の音楽を聴くことができる。
パソコン、スマホがあって、YouTubeに接続できれば、いくらでもただで音楽が楽しめてしまう。
そう、YouTubeは音楽アーカイヴとしても信じられない領域に達している。
貴重な映像を見ることができるメディアかと思いきや、さまざまなアーティストのさまざまなアルバムが丸ごとアップされている。
YouTubeに接続できれば、iPodなどの携帯プレイヤすらいらなくなりつつある訳だ。
もちろん、レコードやCDなどの音楽ソフト、それら専用の再生装置があったなら、よりいっそう自分の好きな音楽を楽しめる。
いっぽうで、お金をかけない楽しみかたが広がっている。
昔ならラジオ。
もっとも、ラジオでは、自分の好きな音楽を好きな時に楽しむことは望めなかった。
流しっぱなしにして偶然に頼るか、お気に入りの番組を欠かさず聴くか、リクエストをするか・・・。
それを思えば、いまの時代がいかに恵まれているかがわかる。
パソコン、スマホがあるし、レコードやCD、ストリーミングなど選択肢も多ければ、かつてに比べれば値段もずっと安い。
若いころには、ありあまる時間を好きなことに、いくらでも使うことができた。
好きなだけ音楽を聴いてられる時間があった。
その頃は音源をどうやって手にいれるかが問題だった。
パソコンもスマホも無かったあのころ、レコードやCDはなかなか買えなくて、好きな音楽を手にいれるため、いろいろな手を使った。
友達に声をかけるのはもちろん、誰それがあのレコード持っていると知れば、友達の友達にまで頼んで借りて、カセットにダビングするなどあらゆる手を使ったものだ。
こずかいをやり繰りしてレコードやCDを買うとなれば、何を買うかには毎月真剣だった。
うっかりジャケ買いなんかして期待はずれだったら、目も当てられない。
手にいれた音源は繰り返し聴いた。
なんだこりゃ、と思うようなレコードでもなんとか理解しようとがんばって、ときに背伸びして音楽を聴いていた。
それでも理解できないアルバムもあって、それはきっと自分の耳が幼いからだと考えた。
いま問題なのは「時間」である。
レコードを買って所有しても、聴く「時間」が無ければそこに収録されている音楽は楽しめない。
再生しないレコードは、単なるモノである。
レコードジャケットをインテリアとして活用することは、あくまで2次利用方法としたい。
飾るだけではだめなのだ。
レコードを単なる飾りモノにしないために、私はがんばってレコードを聴く時間を捻出しているのか?
思い当たるふしは、ある。
レコードを買うスピードに、聴き込むスピードはとても追いついていない気もする。
平日はほとんど時間をとれない。
「今日は片面分のレコードが聴けた」みたいに時間を捻出するのは本末転倒ではないか。
そんなことを言いつつも私はいまだに未知の音楽に餓えているしレコードを買うしことをやめようとはしない。
NORMAN BLAKE "THE RISING FAWN STRINGS ENSEMBLE" (ROUNDER 0122)
ノーマン・ブレイクが1979年にリリースしたレコードを買った。
ノーマン・ブレイクは、カントリー、ブルーグラスのギタリストだ。
ティーンエイジ・ファンクラブというバンドのノーマン・ブレイクとは別の人である、念のため。
ノーマンのギターに、フィドルとチェロとのアンサンブル。
素朴でありながら、とても清々しく美しい音楽。
どことなくクラシック音楽の雰囲気も漂う。
ノーマン・ブレイクは自分の音楽が、カントリー、ブルーグラスに括られることを好まないらしい。
それがよくわかるレコードである。
ぱりっと晴れた休日の朝にぴったりだ。
単純な話だが、こんな素敵なレコードに出会うととても嬉しくなる。
何度も聴きたくなる。
そうなるともう「時間を作る」のではない。
単に、レコードを聴くのだ、聴きたくなるのだ。
そうそう、このレコードも「STERLING」刻印入り。
ただし、「RL」はなし。
クレジットをみると「Mastered by John Nagy at Masterdisk」とある。