CDか、レコードか、それが問題だ | 08:51 |
予約しておいたWILCOの新譜が届いた。
前作「STAR WARS」からほぼ1年のインターバルでのリリースである。
そのまた1年前には、ジェフ・トゥイーディの2枚組ソロがでた。
その頃WILCOの4枚組ベストアルバムも出たのだった。
コンスタントにライヴ活動もしている彼らにして、驚異的なハイペースといって良いのではないか。
何も考えずにCDを注文したのだが、CDで良かったのかと考えてしまった。
最近、レコードも同時にリリースするアーティストが多い。
WILCOももちろんである。
新譜のレコードにはデータのダウンロードキーが入っていて、携帯プレイヤで聴くにあたって不都合は無い。
CDよりレコードの方が少し値段は高いが、レコードも聴けてデータももらえてお得、とも言える。
レコードにした方が良かったのではないか。
CDに未来は無い、のかもしれない。
もはや消え行くメディアと考えて間違いないだろう。
CDよりレコードを買うべきなのだろうか? と考える。
わが家のCDプレイヤは、CDを載せるトレーの動きに不安がある。
スムーズに出てこなかったり、出てCDを変える間もなく引っ込んでしまったりもする。
メーカーで修理を引き受けてくれないとも聞く。
CDというメディアには無理があった、のかもしれない。
ジャズ喫茶「ベイシー」の菅原さんは当初から言っていたこの言葉は常に正しい。
「レコードとプレイヤという高度に完成したメディアがあるのにどうしてCDが必要なのか」と。
ビニール盤を針で引っ掻けば音が出るという不思議。
まさにアナログである。
それを電気的に増幅して大きな音にすれば、とても豊かな音楽になる。
CDはどうか。
録音した音楽を、データに変換してメディアに落として、とっても複雑な光学機器で読み取って、うんぬんかんぬん。
CDは、出現した当初から、レコードより音が良いだ悪いだ比べられていたが、ようするにレコードに対して圧倒的に優れていたのではない。
ではなぜCDだったのか?
商売以外に理由はあったのだろうか?
さて、WILCOの新譜である。
タイトル「SCHMILCO」の意味はなんだろう。
ジャケットがすでに最高である。
悪ふざけとしか思えない(笑)。
愛する子どものためにとはいえ、こんな風に体を張るなんて私には無理だ。
最初の印象は、アコースティック、シンプル、地味。
ちょっと、ジェフ・トウィーディのソロのようでもある。
ヘッドフォンでじっくり聴いてみると、緻密に作られたシンプルさであることが分かる。
これはなかなかすごいぞ、と。
先行試聴もできた「LOCATOR」は、先行試聴だから曲途中でフェイドアウトするのかと思っていたが、アルバムバージョンも同じだった。
かなり素晴らしい曲なのでちょっと残念。
新譜を予約してまで買うアーティストはほとんどいない。
どうして私がWILCOを買い続けているかといえば、作品が常に期待以上の出来であるからだ。
今作も聴けば聴くほど良い。
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20年目のヴァン・ゲルダー | 11:41 |
この夏、47歳になった。
近ごろ、自分が年をとったな、と感じるときがある。
最近までそんなことはなかった。
この夏、老眼鏡を買った。
目が良いのが自慢だった。
40をすぎたころから、視力が落ちてきた。
45を過ぎたら、手元も見えにくくなってきた。
老眼鏡をかけると、とても良く見える。
だがしかし、人前でかけることができない。
恥ずかしい(笑)。
この夏、レコードを買い替えた。
ハービー・ハンコックの「処女航海」を買い換えたのだ。
はじめて「処女航海」を聴いたのは、20年ほど前のこと。
すがすがしさに満ちたレコードだった。
いっぱつで気に入って、それ以来の愛聴盤である。
夏の朝早く、まだ涼しい時間帯のようで、シンとした空気を感じる。
水面のわずか上を、すべるように静かに進む疾走感、そして爽快感がたまらない。
東芝盤を買って、ずっとそれを聴いてきた。
あれからもう20年か、と思う。
独身の時にこのレコードに出会い、結婚し、子どもが二人できた。
あっという間だった。
気が付けば、上の娘は中三、下の息子は中一なんだもの。
今回手にいれたのは、「VAN GELDAR」刻印入りの「オンプ」レーベルだ。
ここ数年に渡って「VAN GELDAR」刻印入りの「処女航海」を探していたが、これが案外みつからなかった。
中目黒「WALTZ」で運良く見つけた。
これまでいったい何枚の「処女航海」を検盤したことだろう。
数えきれないくらいの「処女航海」をチェックしたが、「VAN GELDAR」刻印入りはぜんぜん見つからなかった。
そして今回、ようやく「VAN GELDAR」刻印入り、にたどり着いた。
ジャケットは、色褪せてスレもあるが、盤のコンディションは良好だった。
今回入手した「処女航海」を聴いていると、やってきた娘がこう言った。
「これときどきかかるよね。おとっちゃんはこのレコード好きなんだね」と。
娘の記憶にこのメロディが残っている、ということを知った。
こんな風に音楽は受け継がれて行くのか、と嬉しくなった。
娘や息子がもっと大きくなって、この音楽をどこかで耳にすることがあるかもしれない。
思いがけず耳にしたメロディに、これ知ってる、と思わず立ち止まる。
どこで聴いたのだろう、としばらく記憶をたどる。
記憶は、実家のリヴィングへと、私のレコードへとつながっていく。
そんなシーンを想像して楽しんでしまった。
とはいえ「処女航海」のレコードには、まだまだ先はある。
NYラベルのオリジナル盤ははるか彼方に燦然と輝いているのだから(笑)。
ステレオ盤もあるし、モノラル盤もある。
この夏、私が47歳になった頃、ルディ・ヴァン・ゲルダー氏が亡くなったそうです。
ご冥福をお祈りいたします。
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